おかしいぞ!選挙目当てで〝手を握る〟菅首相と亀井党首
菅直人首相は、郵政見直し関連法案について、「今国会で成立を期す」と、国民新党の亀井静香代表と合意したことを明らかにしました。そもそも、菅直人首相も、仙石由人官房長官も、郵政法案の「郵貯の預け入れ限度額の引き上げ」などには、「官の肥大化につながる」として反対でした。
菅首相と亀井静香・前郵政改革相は、3月28日のTV番組「サンデープロジェクト」の本番中、「(最終案を)事前に説明した」「聞いていない」「あんたの耳が悪い」などと、大変、見苦しい大ケンカを繰り広げ、視聴者から大ひんしゅくを買いました。
その二人が、今回の民主・国民新両党の新たな連立政権協議では、あっさり、郵政法案(衆院で強行採決)の成立で合意したというのですから、驚きです。相容れない外交・安全保障政策を持つ社民党との連立を破綻させ退陣した、鳩山前首相の轍を踏むつもりでしょうか。
結局、政策よりも、連立維持や選挙協力を優先する民主党の「体質」は〝表紙〟を変えても全く変わっていません。選挙目当てで、政治を大きく歪めていく政権与党に、この国の将来を、庶民の暮らしを、任せるわけにはいきません。
郵政法案強行採決は暴挙 政府・与党は「財投復活疑惑」に答えよ
そもそも郵政見直し関連法案とはどういうものなのでしょうか。
「郵政見直し関連法案」が5月31日深夜、衆院本会議で採決され、与党の賛成多数で可決、衆院を通過しました。法案は従来の民営化路線を根底から覆すものであるにもかかわらず、与党側は28日の衆院総務委員会で、たった1日、わずか6時間の審議で強行採決、十分な議論を封殺するという暴挙に出ました。
政府は、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額を2000万円(現行1000万円)、かんぽ生命保険の保険金上限額を2500万円(同1300万円)に引き上げる方針で、これでは、政府の後ろ盾がある郵貯へ民間金融機関の預金が流出し、民間金融機関の経営は圧迫され、中小企業は大きな打撃を被ることになります。
この郵政マネーを肥大化させる郵政見直しをめぐっては、「政府内には国家ファンド(SWF)の設立などさまざまな案が浮上している」(産経新聞)、「資金を特殊法人経由で公共事業にあてた財政投融資の事実上の復活ではないのか」(朝日新聞)など、再国有化、財政投融資制度(財投)の復活を危ぶむ声がでています。
2000年度まで、郵便貯金や年金積立金などの資金は、大蔵省(当時)に運用を預託することが義務付けられており、大蔵省(資金運用部)はその資金を国債購入か財投で運用していました。財投は、大蔵省から、特殊法人(公団・公社)などへ融資、特殊法人は大規模公共事業に投資・融資するといった制度です。
財投のおかげで、郵貯は、貸付が焦げ付くリスクがない上に、国債の金利(一般の市場で資金を調達する時の基準)に上乗せされた利子を受け取ることができました。これは「郵政事業へのミルク補給」(ミルク金利=何もしなくても、優しい母親=国民から、おいしいミルク=税金、を授乳できるという意味)と揶揄されていました。一方、高い金利を課せられた特殊法人は、当然、返済できず、結局は、国民の税金で損失を補てん。自主的な資金調達を行う必要もなかった特殊法人は、杜撰な経営で、ムダな事業に投資を続けるとともに、官僚の〝天下り〟の受け皿となっていました。
国会のチェックがおよばない「第2の予算」と呼ばれた財投は、「ムダ遣いの温床」「隠れ国民負担」といった批判が高まり、2001年度の財投改革で郵便貯金の預託義務は廃止されました。財投改革で「ミルク」が補給されなくなった郵貯は、市場で独自に資金運用しなければならず、低金利の国債を買うだけでは、赤字体質から抜け出せなくなっており、たしかに財投復活は、郵貯にとって「渡りに船」のはずです。
この「財投復活の疑惑」について、委員会質疑で政府を質していかなければなりませんが、それを衆議院において強行採決でゴリ押した与党の対応は「国会の自殺行為」にほかなりません。会期残りわずかという中、参議院では強行採決すべきではありません。与野党で廃案にして議論をやり直すべきです。「事業仕分け」でムダな事業を廃止するといいながら、一方、財投の復活で、新たな、大きなムダをつくるというのでは、国民は絶対、納得しません。
(谷あい正明)