アメリカ国務省の招へいプログラムに参加した谷合正明参院議員の手記がこのほど公明新聞に掲載されました。以下、記事を転載します。
ポートランド市内で開かれたミャンマー難民との懇談会に参加した谷合氏(後列左端)
手記 谷合 正明 参院議員
8月にアメリカ国務省の招聘プログラムに参加し、第三国定住による難民受け入れ状況を視察した公明党の谷合正明参院議員の手記を掲載する。
第三国定住 積極受入れ
ミャンマー難民 “日本型”に大きな期待
この夏、アメリカ国務省の招聘プログラムに参加し、難民制度の研修を受けました。
訪問地は首都ワシントンのほか、ニューヨーク州、オレゴン州、ミシガン州を回り、連邦政府、自治体、NGO(非政府組織)、難民当事者を中心にヒアリングを重ねました。特に、日本が2010年から15年まで第三国定住による難民受け入れを試験的に実施していることもあり、大変有意義な訪問となりました。
第三国定住は、祖国に戻ることも避難先の国に定住することもできず、行き場を失った難民を別の国が受け入れるものです。
世界には第三国定住を必要としている難民の数は80万人いると言われ、実際に約8万人が先進国中心に受け入れられています。
一番の受け入れ先はアメリカです。年間5万人を超える難民を受け入れています。他にカナダやオーストラリア、北欧などが続きます。日本には、これまでにミャンマーのカレン族難民45人が来日しています。
移民国家のアメリカで難民はどのように位置付けられているのでしょうか。不法移民は社会問題・政治問題化していますが、難民受け入れに関しては人道上必要であり、地域活性化のために積極的に受け入れている地域さえあります。
その一つがニューヨーク州のバッファローです。この町は、かつて鉄鋼で栄えていた町ですが、人口が急減し、中心部が衰退していきました。しかし、難民を受け入れることで人口減を食い止めた地区もあります。行政から委託を受けたNGOが就労支援をしますが、工場やホテルなど、勤労意欲がある難民を歓迎する企業も多い様子でした。
一般市民向けに定住難民を紹介する映画をつくった団体もありました。今では若者の間で、難民に関する仕事をすることはカッコイイという雰囲気になってきたとも言われています。
アメリカでは、連邦政府と提携しているNGOが、どこの国の難民をどの州に何人送るかを、受け入れ自治体や傘下のNGOの能力に応じて決めます。
そして、8カ月間は公的な生活費支援や医療支援がありますが、早期に自立した生活の実現をめざすことが、行政府やNGO、難民の間で共有されています。
仕事を見つける最大のカギは言語の克服です。文化や風習に対する理解も定住には必要です。
アメリカにいるミャンマー難民の間では、アジアで初めて第三国定住を開始した日本への期待は大きいものがありました。アメリカ型でもない、北欧型でもない、日本型の定住プログラムを軌道に乗せる必要があると感じました。
現在のところ日本における第三国定住は試行錯誤を繰り返しています。政府は、その知見を生かして、地方自治体やNGOとの連携のもと、ミャンマー以外のアジアの難民の受け入れを徐々に拡大すべきだと考えます。昨年11月、公明党の強い働き掛けで、衆参両院で難民の保護と支援に関する国会決議を行いましが、世界初ということで国際社会に大きなインパクトを与えました。その意義を踏まえ、今後も責務を果たしていきたいと思います。
(公明新聞:2012年9月19日付より転載)